松尾芭蕉の「商人訓」から三方良しの近江商人が始まった

ノグチ(noguchi)

2009年08月02日 14:26

松尾芭蕉の「商人訓」から三方良しの近江商人が始まった
~近江商人は芭蕉の教導訓示によってできた~

 今朝は、歴史の人物から人間を育てる話題を一つ

 俳人の松尾芭蕉は、どうして東北を回り俳句を作り続けたか?
 色々な説があります。隠密、隠遁者、商売、調査、・・・
 今日は、ベンチャー企業家として松尾芭蕉論です。

 作家の童門冬二氏の著書「勝海舟の人生訓」の一節から、

 勝海舟の友人に、塚本定次氏がいました。事業で成功し、たいへんな金持ちだったそうです。あるとき、塚本はこんなことを勝に語った。

「土地をたくさんもっておりますが、使い道の無い荒地もけっこうあります。最初は、近所の人たちにただで貸そうかと思いましたが、それではあまり智恵がありません。そこで、この土地に桜は楓をたくさん植えてみました。木が育てば、春は桜、秋は紅葉です。付近の人達が、吉野の桜も見に行けず、また京都の紅葉も見に行くこともできないで、年中汗を流し苦労するばかりですので、こういう人達に、花見や紅葉狩をしてもらおうと思います。そう思って植えた木なのですが、今は大変大きく育って、一つの公園ができました。無形の楽しみというのは人間にとって、とても大切なものでえると思います。いかがでしょうか?」
 勝は、この行為にひどく感心した。(中略)

 この塚本氏が、「芭蕉は近江商人の始祖だ」と語っていたそうで、同じ本の一節から、
「松尾芭蕉は、大変な俳人ではありますが、同時に大変な商才に長(た)けた人でもあります。今、近江商人は有名で、その商法が注目されていますけれども、もともと近江商人の商法というのは、芭蕉翁が指導したもので、いまだに芭蕉翁の商法が守られているのです。」
勝は、塚本のこの言葉を聞いて、こう語っている。
「長年、芭蕉という男が、ただ俳句がうまいというだけで、これほど人々の間に名が通っている、ということに疑問をもってきた。しかし、塚本が言ったことで、長年の疑問が氷解した」(中略)

芭蕉の近江商人の商法とは、6つの行動パターンがあると言う。

一、バイタリティに富んでいること
二、優れた情報力を備えていること
三、柔軟な発想と思考力をもっていること
四、情に左右されない合理精神をもっていること
五、優れた決断力をもっていること
六、果てしない上昇志向をもっていること
と分析する。後に、江戸、大阪等で大店となっても「座して流動する(行商)」という考え方を捨てなかった。(中略)
  (以上、「勝海舟の人生訓」)

 今日の文章に、加える解説はありません。
 ただ、現在の商魂が問われる中、日本が考え出し、培ってきた商法(商道)が、色々な事件・不祥事で問われています。
 今日は、芭蕉の句を思い出し、さらに近江商人の「三方良し」の理念を噛みしめたいと思います。

「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」(松尾芭蕉)


*参考資料:童門冬二氏著「勝海舟の人生訓」

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