大人は言必ずしも信ならず、行必ずしも果ならず。(孟子)
国会は、小沢政治資金疑惑に終止符が打たれたことで、検証が今後も続くが来年度予算審議が大詰めを迎える。
昨夏の総選挙で中心をなした「マニフェスト」の実施率について、議論が国民間でも、識者の間でも、厳しく意見が交わされている。欲張りマニフェストである民主党の公約を、全部実施すれば昨年の予算をはるかにこえる赤字国債が必要なります。
何処を削り、何処を残すか?
議論は、予算成立後も続くことと思います。約束を守る、何でもかんでも約束を守るべきかの議論は、有史以来、リーダーたちの思案の大事な問題となって来た。
中国古典の解説書を多く書かれている守屋洋氏の著書「中国古典 一日一言」に次ことが書かれていた。
(本文)
田中角栄元総理が北京に乗りこんで、当時の周恩来首相と国交回復の交渉をしたときのこと、周恩来首相から角栄氏に一枚のメモが渡された。見ると、「言必信、行必果」と書かれてあったという。「言必ず信、行必ず果」――約束したことは必ず守ってくださいよ。やりかけた仕事は必ず最後までやり通してくださいよ、と読めることばだ。このことばの出典は、『論語』であるが、必ずしも褒めことばとは言いがたい。なせなら、この程度のことができなかったら、そのへんのカスみたいな政治家と同じにみなしますぞという意味が、言外にこめられていることばであるからだ。(中略)
(以上、「中国古典 一日一言」)
田中角栄氏は、周恩来首相のメモから、論語の言外にこめられた皮肉まで読み取れたかは定かでないが、これを期に中国との国交正常化交渉が、進展して行った。「言った事が必ず実行してください。実行した事は必ず成果を出してください」、当たりまえの事ですが、現実は様々な障壁が起り、目的通りに完了すことができことも多い。
この文の末尾に次のことが書かれていました。
(本文)
それを間接的に語っているが、『孟子』のことばである。
大人(だいじん)は、必ずしも「言必信、行必果」にこだわらなのだという。では、大人にとって第一義的に重要なことは何か。「ただ義のあるところ」と『孟子』は断言している。「義」のまえには、前言を取り消しても、いっこうにさしつかえないのだという。(中略)
(以上、「中国古典 一日一言」)
「大人(だいじん)は言(げん)必ずしも信ならず、行(こう)必ずしも果ならず」
人間は、やはり「欲」が先に出るのが一般人だが、リーダーたる存在感は、「義が先で、利が後」になるような言動が大事(周りの納得)と感じる。
『荀子』の解説書に、人にとって『欲』は無くてはならないが、「私欲」を限りなく「公欲(公に尽くす)」に近づけることが大事とあった。
田中角栄氏は、くしくもロッキード疑惑(贈収賄)で犯罪者となり、首相の座を追われた。昨年暮れの小沢幹事長の北京への200人規模の訪中劇は、どんな思いと、どんな結末になるのかは、今後を見るしかありませんが、田中角栄氏の薫陶を受けたと言われる、民主党の小沢一郎氏、今後も「言必信、行必果」に関心を持っていきたいと思います。
*参考資料:守屋洋訳著「中国古典 一日一言」