司馬遼太郎vs梅棹忠夫対談「日本文明の危機」より
おはようございます。数年前に、知った比較文明学者の梅棹忠夫氏と、作家の司馬遼太郎氏との対談の本を、リサイクルブック店で、見つけた。1995年元旦に、21世紀の日本人へのメッセージが込められたものです。
末尾に、現代の日本が抱える問題が、提示されている。少し、紹介をします。
(以下、抜粋)
梅棹 大切なのは知恵でしょうね。
司馬 物事を識別して統合する心の動きですね。
梅棹 そこで大局的に事態をとらえる訓練が必要になります。……、私は21世紀の日本は非常につらいことになると見ています。どうも日本文明はいまが絶頂ではないでしょうか。
司馬 残念ですが同感です。衰退期に向かっているという証拠に、日本文明の現在の構成者が少しものを考えなさすぎるように思いますね。
梅棹 現在はこういう幸せな社会ですから、考えなくてもいいんです。だから、あまり危機感がありません。
司馬 日本社会の均一性の高まり、平凡な人々の集団であることを懸命に指向しています。
梅棹 独創を育てない社会です。
……、だから高度の科学技術ではアメリカと差がついてきています。アメリカも相当混乱した社会ですが、内部崩壊はしないでしょう。……、いま世界に求められているのは、結局、一種の英知ですね。経験の積み重ねに裏打ちされた英知です。
司馬 伝統的な事なかれではなくて、積極的な英知を生みだす社会にならないと、つぎの世紀には落魄(らくはく)するのではないでしょうか。
(以上、『民族と国家を超えるもの』司馬遼太郎対話選集10より)
日本の首相は、21世紀になり、あまりにも変わりすぎて、海外からは「何番目?」と番号で呼ばれるとも聞きます。
東日本大震災、昨日の東京電力の対応の危機感の欠如は、梅棹氏の指摘する、危機を考えない前例踏襲的な発想、オリンパスの損失隠しも、危機意識の欠如と当事者の責任感のなさに尽きると思います。
21世紀の日本人に何が必要か、2人は色々指摘していますが、「英知とは、積み重ねです」の言葉どうり、色々な分野のリーダーたちが、将来の日本の姿を創造する努力を怠ってはならないと思います。
司馬氏や梅棹氏の教示を大切に受け留め、一人ひとりが経験を積み、しっかりと生活を続けるところからしか、日本の活力は生まれないと思っています。