2007年12月01日

大学教員の半数を「契約教授」にしよう(糸井茂)  

大学教員の半数を「契約教授」にしよう(糸井茂)  

 2001年6月の亡くなられた経済学者の糸井茂氏の経済コラムを久々に読み返した。最近問題なっている「契約社員」という働き方が、格差を生んでいるし、サービス残業の温床にもなっているとも感じるが、今日の「契約教授」の話は、ちょっと違うようです。

 大学の教員には、色々スタイル、職能の人々が居た方が、生徒たちの視点、視野を広げるのではの提言です。私も地元大学の非常勤講師なる肩書きを頂いていますが、年に数回の講義しかしていません。本業の傍らと言う事で、有償ボランティア講師なのですが、私がこれまで指導を受けてきた大学の教授たちは、多彩で、多芸の方が居て色々な教示を受けてきました。


 糸井氏のコラム最後の部分にある、

「日本の大学には、終身雇用に守られ、教育にも熱心でなく、専門分野の研究も十分でなく、また社会的活動にも全く従事していないような教員が、ごろごろいる」(中略)

 大学活性化への近道だし、大学財政で最も負担が重い人件費も、大幅に削減できると思うのだが。


 なかなか厳しいご指摘ですが、当たっている人たちを見かけることが多々有ります。大学進学全入時代になり、更なる大学存続競争が始まり、各大学の財政スリム化と特性を出すことの両方が求められています。

 糸井氏の契約教授システムを採用し、地方の大学の生き残りをかけ、地域産業の育成と人材確保、更に地方分権時代の頭脳集団構成に、地元大学と自治体、企業との連携が必要と考えます。

 今日は、糸井氏のコラムを紹介し、地方大学の人材確保の新しい試みが今後広がる事を期待します。

・糸井茂コミュ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1978853



~糸井茂の経済コラムHPより~
http://www.tv-tokyo.co.jp/nms/column/itose/itose0417.html

大学教員の半数を「契約教授」にしよう -

大学教員にも「契約教授」制度を導入してはどうか、ということだ。

筆者は、日米独の民間金融機関で、およそ20年間勤務した後、公募により、新設の県立大学である宮城大学の教員になった。人生のセカンド・キャリアとして、教員という仕事を選択した理由についてはここでは省くが、その選択自体には満足している。

宮城大学の教員構成を見ると、野田一夫学長の強い意向を受け、約半数を私のような民間企業出身者が占めている。彼らの講義は、現実のビジネス事例をケース・スタディとして取り上げたり、最新の経済動向を解説したりと、学生からは好評である。

しかし、現業を去って3年を経た今、私は、ある限界に直面している。私の場合、金融論、資金調達(ファイナンス)といった科目を担当しているが、こうした分野は、「現場」から離れてしまうと、その知識が次第に陳腐化してしまうからだ。ところが民間との兼職は、公務員の兼職禁止規定によって阻まれている。

国立大学教員の場合は、4月14日に成立した「産業技術力強化法」により、一定の要件の下に、民間企業の役員を兼職できるようになったが、それが想定している分野は、コンピュータやバイオ等、民間への技術移転が期待される「理系」分野に限られている。

つまり、経営、金融、あるいはマーケティングといった分野は、現場感覚を維持することが、「教育上の必須要件」であるにもかかわらず、「文系」として括られてしまっているために、民間との兼職は解禁されていないのだ。こうした制約によって、民間企業出身者の知識が陳腐化していけば、それは、教員本人にとっても、教育サービスの受益者である学生にとっても不幸な事態である。

そこで提案したいのが、「契約教授制度」の導入である。念頭に置いているのは、多摩大学の「勤務形態別給与制度」というモデルだ。これは、専任教員を4種類に分け、勤務日をAは週4日、Bは3日、Cは2日、Dは1日とし、基本給をAから順に100%、85%、70%、55%と差を付けるというものだ。

そして、C、Dを選択した教員は、試験監督などの雑務から解放される一方、教授会に出席する「権利」は保持され、ゼミも開講できる(ソニーの社外取締役就任を巡って、人事院から許可が下りず、一橋大学から多摩大学に転じた中谷巌教授は、このD方式の適用を受けている)。

この制度のC、Dを基本形に、さらにそれを「有期任用化」にしたものを、筆者は「契約教授」と呼んでいるのだが、契約教授が実現すれば、大学(=教育)に軸足を置きながら、民間で思う存分活動することができる。

いや、そんな制度を導入すれば、大学での教育が疎かになり学生に迷惑が及ぶ、と危惧される向きもあるかも知れない。しかし、そうした事態は、学生による授業評価システムの導入と、その結果の公表を行なうことによって回避できる。

例えば、思い切って既存の大学教員の半分を、この契約教授にしてしまってはどうだろう。

「日本の大学には、終身雇用に守られ、教育にも熱心でなく、専門分野の研究も十分でなく、また社会的活動にも全く従事していないような教員が、ごろごろいる」というのは、宮城大学の野田学長の口癖の一つだが、実際、新聞すら読んでいない教員だって存在するのだ。

教員組織の半数を、契約教授という異能で固めれば、そうした怠惰な専任教員は慌てふためくことになる。大学活性化への近道だし、大学財政で最も負担が重い人件費も、大幅に削減できると思うのだが。


・糸井茂プロフィール
宮城大学事業構想学部教授(担当は金融論、会計学、ビジネス英語)
1953年、福岡県生まれ。上智大学外国語学部卒業後、第一勧業銀行(その間、スタンフォード大学経営大学院にてMBA取得)、ソロモン・ブラザーズアジア証券ディレクター、ドイチェ・モルガン・グレンフェル証券東京副支店長、長銀総合研究所客員研究員などを経て、97年4月より宮城大学事業構想学部助教授。99年10月より現職。 著書に、「ビッグバンを越えるスーパー金融マンの条件」(経済法令研究会)、「なぜ銀行を救うのですか」(東洋経済新報社)、「アングロサクソンになれる人が成功する」(PHP研究所)、「パッと頭に入るIT革命」(下記参照:実業の日本社)などがあった。 経済審議会特別委員等の政府関連委員を勤めたほか、テレビ番組等を通して積極的に提言を続けてきた。
2001年6月30日死去。



Posted by ノグチ(noguchi) at 12:27│Comments(0)
 
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