2022年01月27日

「みんなが救われるような嘘をつきなさい」〜宇沢弘文氏が預けられた曹洞宗の住職の言葉〜

「みんなが救われるような嘘をつきなさい」〜宇沢弘文氏が預けられた曹洞宗の住職の言葉〜

毎日、毎日、コロナの話題ばかり、気が滅入ってきます。何かスカッとしたいな、と思い考えていた。週末に長距離ウォークでもするか!と、100キロウォークで使うリュックサックを引っ張り出した。ポケットの前回の残り物がないか調べていたら、なんと不明になっていた経済学者・宇沢弘文著『人間の経済学』の本が出てきた。

あら、ここにあったか!

と、パラパラと開き、末尾の方に来て、戦後直後の総理の石橋湛山の言葉が目に止まった。

「シロウトの経済学」

(以下、本より転載)

「私のときは、もとより、いわゆる学者ではないから、本を読んでも、誰がれが、どんな説を唱えたなどいうことは一向覚えていないし、覚えようともしなかった。ただ読んだ中から、実際に役に立つと思う点を拾い出し、それを自分の書いたり、実行したりすることに応用した。シロウトの経済学は、それで良いのではないかと思う」(「シロウトの経済学」、『石橋湛山全集』第14巻)

以上のところから読み出した。本の末尾まで10ページしかない部分だったが、湛山は「日本のケインズ」と称されるほど経済学に造詣が深い、と宇沢弘文氏が解説されています。

この石橋湛山は、自らのことを「有髪の僧」と常々語っていたとあった。

冒頭の言葉は、宇沢弘文氏が、東京の住まいが空襲て焼失し、父の元実家近くの曹洞宗の寺に戦後10年近く預けられた時に、日々聞く住職の言葉に啓発されていたことを振り返っている。

宇沢弘文は、お寺で修養している時、アダム・スミスの『国富論』の中にある

There is no wealth, but life.

という言葉を「富を求めるのは、道を聞くためである」と訳し、経済学を学ぶときの基本姿勢としてきた、とありました。

石橋湛山は、経済学者ですが、政治家でもありましたから、常に弱者のことを気にかけた言動だったとも宇沢氏は振り返っています。

政治家は、"嘘をつく"のが上手?とも。自ら行いを隠す嘘は決して許されません。しかし、冒頭のような嘘は、後々には、理解されるのではと思います。曹洞宗の僧の言葉の全文は、

「嘘をつきなさい。ただし、みんなが救われるような嘘をつきなさい。自分の心は傷つくだろうが、それに耐えて嘘をつきなさい」

弱い人たちを救うような嘘を言えるようになりたいものですね。昼から哲学の話になりました。

*参考資料:宇沢弘文著『人間の経済学』


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