2009年06月23日

人生を甘からしむる心がけ~新渡戸稲造~

人生を甘からしむる心がけ~新渡戸稲造~

 新渡戸稲造氏の若者へ向けたメッセージ『自警録』に、次の一節があります。

(本文) 
 ・・、おのおのが潔(いさぎ)よい愛情から起算して、(親なり妻なり子なり、最も自分に近いゆえに最も自分に親しい情合いに基づいて)己の日々の事務を怠らず、百姓は百姓、商人は商人、教師は教師、役人は役人と己れの預っている職務を忠実にして、なおかつ思想は高く俗界を超越して、商人が金を造っても金を目的とせず、農家は肥料を施しても収獲以上に目的を置き、教師が教場に出ても志を遠きに着け、役人が執務するに、俗務のために没脚(ぼつきゃく)されない。

 すなわち一言に縮めると、吾人が人格としてまったく世を離れた思想をいだくと同時に、常に世に対してはいかなる俗務といえどもこれを尽くし、わが輩のたびたびいう垂直的関係と平面的関係との調和を始終図って行けば、つまらぬ務めにも深い意味のあることがわかり、また深い意味のある思想がいわゆるつまらぬことにも顕(あらわ)れて、もって人生の味がはなはだ甘きをなすものである。

「軒ベン(高貴なる人の乗る車)の中におれば、山林の気味なかるべからず。林泉(田舎の意味)の下に処(お)りては、須(すべか)らく廊廟(朝廷)の経綸を懐(いだ)くを要すべし」と。

 吾人は、いかなる低き、いわゆる卑しき職に従事しても心一つは高く持ちたい。
(以上、新渡戸稲造著「自警録」、実業を精神化せよ)

 どんな仕事、どんな立場であろうと、世のことに感心をもつ事の大切さを説いたものと思います。日々、日常のわずらわしい仕事もこなし、本を読み、さらに人に教示するような域には、なかなか至りませんが、志を高く持ち、日々懸命にできることを努力し続ける事が必要と思います。
 今日は、手抜き日記ですが、世に生きる人の生き方の真髄は何か、教示を得たように思います。

*参考資料:新渡戸稲造著「自警録」


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Posted by ノグチ(noguchi) at 09:05│Comments(2)偉人
この記事へのコメント
船はそうですね

 個室などに入っておれば まあ いいが

 一番船底で泊まると そう 世の中がわかる

 わかるという意味は なんでしょう

 感じるといった方がいいね。

 前に、逃れた変装の坊主の話、したかな

 Ichiro
Posted by Ichiro at 2009年06月23日 14:37
>わかるという意味は なんでしょう

>感じるといった方がいいね。

リアリズムと、司馬遼太郎氏が講演の中でよく語っています。

日本の政治家に、このリアリズムが欠如していると思います。

創造するには、確たるリアルな体験が必要と思います。

戦中・戦後の東京電力を導いた松永安左衛門氏は、人間を成長させるには、三つの経験が必要。

一つ、左遷mたは失脚。
二つ、大病。
三つ、投獄。

全部、松永氏が経験した事、体験から吐露する言葉には、威圧感さえ感じる。

>個室などに入っておれば まあ いいが
>一番船底で泊まると そう 世の中がわかる

いろいろ議論されたが、政治的リーダーは、一番船底の体験が無ければ、人と圧倒する威圧感が生れないように思います。

何時も、書き込みに感謝します。
感想が、遅くなりました。
Posted by ノグチ(noguchi)ノグチ(noguchi) at 2009年07月25日 12:57
 
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