2009年08月15日

自分を社会役立てるための上昇志向(勝海舟)

自分を社会役立てるための上昇志向(勝海舟)

 童門冬二氏の著者に「勝海舟の人生訓」なる文庫本があります。その中で、「自分の能力に付加価値を生み出せ」というテーマで書かれた一節に次の部分がありました。

(以下、本文より抜粋より)
 自分を社会に役立てる
 この態度は、人生に対して大変積極性があるといえる。しかし、それがただ、「自己能力に付加価値を生む」ということであれば、それは、そのへんにうようよいる、「出世亡者」になってしまう。
 勝は違った。彼は、決して単なる出世亡者ではなかった。もちろん、勝に上昇志向がなかったとはいえない。彼も、出世主義者の一人であったことは事実である。しかし、勝は、「世の中に役に立つ人間として、出世していく」ということを念願していた。
 彼にとっては、「社会に役立つこと」が先であって、「出世や名声、あるいは富」は、その社会に役立つことを成しとげたことによって、付加的に、自然についていくる、ということである。ここが、普通の人間と彼が違ったゆえんだ。
 彼は常にこの、「自分の価値観におけ主と従の関係」を守り抜いてきた。つまり、価値観の中で、主とすべきもの、従とすべきもののけじめを、はっきり貫いていたのである。だからこそ、彼の行動が、彼を見抜く人間によって支持されたのだ。単なる出世主義者であったなら、多くの先達達は、決して彼を支えなかった。(中略)

 勝海舟の「志」が、何処にあるか、何処を目指していたか、更に、価値の重要度を何処に置くかで、周りからの支持の様相が変わるという教えと思います。

 勝は、剣術の師匠である島田虎之助から、「剣術もいいけれど、これからは洋学の世界だ」に触発され、たちまち洋学者に変じ、新しいオランダ学を専攻した。しかし、学問は学ぶだけではなんもならない。それを社会に役立ててこそ意味があるとして、勝は「(その当時の)最大の課題は、海防である」と、砲術の学び、製造にも着手した。

 勝は、剣術からスタートし、その剣術を製品(完成)とせず、原料として考え、これにオランダ語を付加し、オランダ語から砲術製作という実際面の付加価値を生み、さらに、そのハード(モノ)の分野に止まらず、ソフト(ヒト)の世界までおし広げた。

 勝は、砲術製作にはびこっていた悪習(賄賂)を、厳として退けた。そのことが、彼の名を高め幕臣に知られて、さらに(当時の)総理大臣である阿部正弘にも登用される契機になった。
 この勝を生み出すた原動力は、やはり貧乏である中でも、自己資本としての体力を尽くし、これに知力を投入して、まさに獅子奮迅の努力をした。そのベースとなった価値観は、「世の中に役に立つ人間として、出世していく」だと思います。

 昨今の出世主義は、名声、富貴が先の目的になったいることが多い。幕末にもそのような志向の族も居たのでしょうが、勝海舟はそうではなかったことで、大きな業績を残し、現代に至るまでの名声も残しました。

 勝海舟は、自分の人生そのもので「人生の目標を何処に置くか」、とても大切なことを後世の私たちに示しているように思います。


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Posted by ノグチ(noguchi) at 12:38│Comments(0)偉人
 
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