2011年10月27日

分かりやすく言えば「節度を守る」と言う事

分かりやすく言えば「節度を守る」と言う事

幕末の思想形成で大きく維新に寄与したといわれる、熊本の儒家・横井小楠が居ます。横井小楠は、日本の陽明学の祖と言われる中江藤樹の一番弟子の熊沢蕃山を敬慕していました。熊沢蕃山の講義録をまとめた「集義和書」の教示を読み、心とどう向きあい、人と関わり、家族、男女関係、等々、人の生き方を考えるものがあります。

「人の心とは、そもそも、゛現実世界゛に触れて感じたり思ったりするものだ。現実世界と無縁に心が存在するわけではない。
 現実世界には、寒さもあれば暑さもある。酒もあれば食う物もある。男がいて、女がいる。厳しい寒さや暑さを避け、食う物を求め、男が女を欲し、女が男を欲するのは、人の心の゛自然な動き゛である。どうして悪と言えようか。それを批難して゛邪悪な欲望゛呼ばわりすることこそ、愚かしい間違った考えである。
 温かさや涼しさを求めるのは、理である。飲食を喜ぶことも、理である。男女が親しみ合うのも、理である。そうすることを、人は自然に求めるのだから。
 ただし、周囲の環境バランスを崩してまで温かさや涼しさを求めたり、腹が満ちているのに飲食をなお求めたりするのは、理を超えた悪しき欲望である。そして男女が、人としての礼儀をなおざりにして求め合うならば、これもまた、許されぬ欲望である」

 蕃山の、心の正しき姿、を的確に説明している言葉と思う。つまりは、あらゆる欲望わ自分の良知でコントロールできているかぎり、人は「理」から外れることはない。男女間も、分かりやすく言えば「節度を守る」と言う事である。
 熊沢蕃山は、晩年不遇の状況になりましたが、儒家として教義はいまだに輝きを放っていると思う。
 熊沢蕃山は、岡山藩主池田光正公の要請で藩校の校長になりました。同時期に、岡山藩は庶民の学校「閑谷学校」を世界で始めて創設した。私も3年前に、閑谷学校を訪問し、素晴らしい講堂を目の当たりにし、池田光正公と熊沢蕃山の教育への情熱と学校維持の仕組みに感銘を受けました。


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Posted by ノグチ(noguchi) at 06:58│Comments(0)偉人
 
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