2013年01月08日

個人農家で、東洋一の小麦生産「勝部徳太郎の遺訓」の真髄とは

個人農家で、東洋一の小麦生産「勝部徳太郎の遺訓」の真髄とは

おはようございます。今朝のウォーキングは、それほどまでに寒くありませんでした。朝から、良い汗をかきました。

さて今日の話題は、昭和の日本の「小麦王」を紹介します。

昭和50年代小麦生産で、1億円を超える収入を上げた故勝部徳太郎氏は、極寒の北海道で、冬に出稼ぎをせずに、睡眠を削って働き続けた農業人。

勝部氏が、戦後最初に始めたのは、花の栽培だった。殺伐とした終戦後の生活に、花々が潤いを与えた。札幌に出荷したら、花は飛ぶように売れた。

昭和24年になると、昭和18年から手掛けていたが、イチゴ生産に力を入れた。まだ食べるのもままならない時期、4トントラック2台チャーターして札幌へ持ち込んだ。その量は、札幌市民の7割にもなる。

他の農家もイチゴの利益率の高さに力を入れ始めると、価格が下がり始めると考え、勝部氏は50万本のイチゴ苗を売却し、もはやその時期は終わったと、今度はGHQが農地解放で売出した土地が、10年も経たないうちに離農するもの増えて、勝部氏に売りに来るようになった。昭和30年には、夕張に75町歩の大農場になった。

そこから、本格的な小麦生産に取り組み、日本で最初にアメリカから大型農業機械を取り入れたのも勝部氏だった。昭和50年代になると、農地は150町歩、小麦500トン、1億円の年収になっていた。

勝部氏が夫婦して独立した時は、年収240円、財産は2町4反、50円の価値しかない掘立小屋のみ。

勝部徳太郎氏は、戦前の義務教育を受けて働きはじめた。貯めた金で最初に買ったのは、大正13年の20歳のとき、日当30銭の時代、3円30銭の『漢和大辞林』を買ってボロボロになるまで勉強しつづけた。

結婚してからは出稼ぎせずに、妻との暮らしを大事にするために、4時間睡眠で働き続けた。それで、買ったのが5円の鉱石ラジオ。夕張は、新聞が一日遅れて配達されるので、情報が遅い。勝部氏は、毎日レシーバーに耳を当て、商業の中心地小樽の生産相場放送を聞き、克明にメモしておいた。

この情報の蓄積が、戦後の花栽培、イチゴ栽培の成功につながり、小麦農家へ進化して行った。勝部氏は、多くの訓示を残しています。

「福の神が最も嫌うもの 自分の仕事を怠けるもの」

「死ぬ気でやれば決して死なぬものなり、努力して掴んだもの」

「誰もやったことのない仕事、誰もやれない仕事こそ男として」

「十年辛抱せよ十年の歳月は立派に成功出来る歳月」

「人生にやり直しが出来ると思うな長く生きても百年よりない」

勝部徳太郎氏の伝記には、多くの訓示があり、北海道各地の石碑に刻まれている。最後に余談を転載します。

(以下、転載)
勝部氏の農場に、農業関係の大学教授らが視察にきて、ああでもないこうでもないと学識をひけらかすが、「大学の先生の話は、まず金が儲からないことばかりですな。その話をありがたく拝聴する農民は、必ず貧乏します。泣かねばなりません。先生たちは高い給料もらっておられるから生活に不安がなく、言うことが理想的なことばかりだスなあ」と、馬耳東風、涼しい顔で受け流すのみ。(略)

実践からの気付き、極寒の地での農業で生きる覚悟を決めたリーダーは、大学教授もタジタジだったと思います。勝部徳太郎氏は、自分で稼いだ金で学び、最新情報を集め、データを蓄積し、いざという時(投機的農業)を逃さず、事業拡大に成功した篤農家の代表と思います。

本日は、とても長い文章になりました。お読み頂き感謝致します。


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Posted by ノグチ(noguchi) at 09:01│Comments(0)偉人
 
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